朝、カーテンを開けると雪だった。
東京でこんなに降るのは何年ぶりだろう。
支度して、大学へ向かう。
小学生の男の子が、口を空に向けて広げている。降ってくる雪を食べようとしている。
(恵みの)雨に向けて口を開ける人は漫画か何かで見覚えがあるが、雪に向けて開ける人ははじめて見た。雨は飲み物で、雪は食べ物。
30mほど前方で、自転車に乗っていた中学生が盛大に転んだ。周りにいる人達は誰も助けない。彼は恥ずかしそうに俯きながら、ゆっくりと立ち上がって自転車を起こし、また漕ぎ始めた。雪のせいで転び、雪のおかげで無傷だったようだ、僕も構わず通り過ぎた。